Apr 26, 2019

日常の夕飯 ~せせりと豚ヒレ肉の立田揚げなど~

もう少しで5月になろうとしているのに、
今日は、肩にチカラをいれて歩いてしまうほどの、冷たい雨。
つい、熱々の鍋料理やおでんが食べたくなった。

おでんといえば、
ワタシが生まれ育った静岡県中部地方には、
駄菓子屋さんの片隅で、おでんが売られていた。
学生時代、部活動の帰りに小腹が空いたら立ち寄ったり、
家で、“ ちょっとオナカが空いたね”、“最近おでんを食べていないね”となると、
すぐさまおでんを買いに行っていた。
そう、静岡では、おでんは駄菓子屋で買うものだった。

どの店にもベテランのお母さんがいて、
「今日は何にする?」があいさつがわり。そのあと、世間話をしたものだ。
店内は、飾らない昔ながらの駄菓子屋さん、という感じでほっとできる空間でね、
そんな店内の雰囲気も好きだった。

おでんのダシは、開店以来ずっと継ぎ足し、具材にはしっかりと味がしみている。
豚モツやら、かしらやら黒はんぺんにじゃがいもなどなど…
どれもこれも、とびっきりの姿で出迎えてくれ、
店内に足を踏み入れる前から鼻腔をくすぐる香りとともに、
それはもう、食欲をそそられた。

買うお店はいつも決まっていた。
ザンネンながら、その店は惜しまれながら閉店してしまったのだが、
舌の記憶だけはしっかりと残っている。
幾重にも折り重なる深い味わい。
そんなとびっきり美味しいおでんには、あれ以来出合っていない。

が、あるとき、似たような味を口にしたときには、驚いたのなんのって。
赤坂にあるビストロ、コムアラメゾンの「スープドゥガルビュ」を飲んだときだ。
このスープを初めて飲んだときは、ワタシの姉も同席していたのだが、
ひと口飲んだあと、ふたりで顔を見合わせ、
「モリタのおでん!!」と、ふたり同時に叫んでしまったことを思い出す。

このスープは、生ハムやら白いんげんやらを煮込んだフランス、ラング地方のママの味、
とのことだったが、決して派手さはないのだけれど、
五臓六腑に優しくしみわたる、心温まる味がした。

モリタの(幼少の頃から食べてきた)おでんが、フランスのママの味と
国境を越えてつながるなんて!不思議でもあり、どこか嬉しくもなったものだ。

そういえば、東京在住だったかたが仕事の関係で静岡勤務になり、
モリタのおでんを口にした途端にはまり、東京に戻ったあとも、
大きな鍋を車に積んで買いにきて、東京静岡間を行き来していたというかたもいらした。
モリタのおでんに魅せられたひとは数知れず。
ワタシもそのひとりだが、皆、一生モリタのおでんの味は忘れないだろう。

先日の夜、昆布を煮ようと思ったら、
ふと、モリタのおでんにはいっていた、とろけるような昆布を思い出した。
食べたいなぁ…
食べたくてたまらなくなり、いつもは昆布を細く結ぶのに、
モリタ流に昆布を太くして煮てみた。

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先日の夕飯

ホタテとブロッコリーの中華炒め煮
昆布と鶏手羽肉の煮込み(先日作った鶏手羽肉のオーブン焼き入り)
もやしとみょうがのごまクリーム和え
キムチ
せせりと豚ヒレ肉の竜田揚げ
長芋のフライ

時間がなくて、煮込み時間が短くなってしまい、
昆布はモリタのおでんのようにとろけるような柔らかさにならなかったのだけど、
おいしい記憶とモリタのお母さんの笑顔が蘇ってきて、
懐かしさがこみあげた。
やさしい気持ちにもなれた。
味の記憶って、やっぱり大切。

今度は、太く結んだ昆布をとろけるくらいまで
じっくりと煮込むことにしよう。
そう決めた。

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