Apr 7, 2016

顔がみえる器たち

昨日の夕暮れどき、近所で買い物をしたあと、
いつも通り農家さんのウチの前を通ったら、畑のまえで珍しく陶器を売っていた。

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近所に住んでいると思われる年配の方々が、
なにやら楽しそうに、わんやわんやと座って話をしている。
そんなほのぼのとした雰囲気に誘われるように、陶器に近づくと、
陶器は言い値で、と書いてあった。

気になった器があったので、お財布のなかを見ると、
悲しいかな、スズメの涙ほどしかはいっていない。
…あっ、そうか。
さっき買い物をしたとき、
残金を気にしながら商品を決めたのだった…
と気づく。

おじさまたちが、「赤ら顔でごめんね。」と言いながら、
器の説明をしてくれた。
赤ら顔なのは、少しまえに、みんなで一献傾けていたからだという。

皆さん、ふるまいが紳士的で、人生も楽しんでいらっしゃるように見受けられた。
とても素敵だなぁ、と思いながら
しばらく器の話に耳を傾けていたのだけど、
手持ちがなかったので、後ろ髪をひかれながらも帰ろうとしたら、
作陶家以外のかたがみな、作陶家に掛け合ってくれた。

結果、気になっていた大鉢を手に入れることができた。
あまりに申し訳ないので、お財布にある小銭を渡したら、
小皿までつけてくれた。

ほんの10分くらいのやりとりだったのだけど、
地域のひとたちの温かさに触れ、ほっと心が和んだ。
器を安く手に入れることができたからではなく、
この街に住んでいてよかった、
しみじみとそう思った。

これからこの器を使うたびに、
陽気に笑う、赤ら顔の紳士たちを思い浮かべるだろう。

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